タイガー魔法瓶の「Siphonysta(サイフォニスタ) ADS-A020」黒をベースとした本体に、薬のカプセルのような透明な容器がセットされている。未来的でかっこ良いです
サイフォンのコーヒーって飲んだことあります? 一部の喫茶店はサイフォンで淹れているので、気がつかないうちに飲んでいる人も多いと思います。理科の実験器具のような、独特の形状をしたガラス器具を目にした人もいるでしょう。
ただ、自宅で飲んでいる人はかなり少数じゃないでしょうか。この記事では、サイフォン式のコーヒーメーカー、タイガー魔法瓶「Siphonysta(サイフォニスタ) ADS-A020」を、「サイフォンって何?」って人にも分かるよう伝えてみますね。
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タイガーが高級コーヒーメーカー参入。自動化したサイフォン式
まずは、一般的なサイフォン式コーヒーの説明です。下に雑な絵を描いたので見てもらいたいんですが、サイフォンは上下2つの容器で構成されています。上の容器(ロート)からパイプで下の容器(フラスコ)につながっています。ロートのフィルター上にコーヒー粉を、フラスコに水(もしくはお湯)を入れ、フラスコを下からヒーターで加熱します(1)。
沸騰したお湯は、フラスコ内の膨張した空気に押し出されてロートに上がっていきます(2)。お湯とコーヒー粉が一緒になるので、ヘラで攪拌します(3)。
コーヒー粉をお湯に浸してじっくりと抽出するところが、一般的なペーパードリップなど(透過法)と異なり、「浸漬(しんし)法」と呼ばれています。「じっくり抽出したら濃くなっちゃうんじゃないの?」と思うかもしれませんが、実は逆で、一定の濃度以上は溶け出さず、えぐみがない柔らかな味となります。そして、ヒーターを外すと重力でコーヒーが下のフラスコに落ちます(4)。
サイフォン式のコーヒーの仕組み
このサイフォンを全自動にしたコーヒーメーカーがタイガー魔法瓶の「Siphonysta」です。ここで改めて、最初の写真を見ていただきたいのですが、上に水が、下にコーヒー粉がセットされています。普通と逆です。
仕組みが謎だと思うので、早速コーヒーを淹れてみましょう。カプセルのように見えるシリンダーユニットは上下2つに分かれています。まずはフィルターをセットした下のシリンダーにコーヒー粉を入れます。そして上下のシリンダーをつなぐジョイントにセット。次に上のシリンダーに水を入れてフタをし、こちらもジョイントにセット。そのまま本体にはめ込み、ロックバーで固定します。この手順、初回は非常に難しく感じるんですが、2回3回やれば、取説など見ずにできるようになります。
下のシリンダーにコーヒー粉を入れ、ジョイントにセット。シリンダーを立てかけるスタンドも付属しています
上のシリンダーに水を入れジョイントにセット。本体にセットしてロックバーで固定
次にメニューの選択です。メニューは風味が、Acidic(酸味)〜Medium(中間)〜Bitter(苦味)の3段階、濃さをLight(すっきり)〜Medium(中間)〜Strong(コク)の3段階、計9パターンに調節できます。さらに、湯温を2段階に変化させて抽出する「Dual Temp」モードも備わっており、全部で10パターンの味が選べるというわけです。
味と濃さのバリエーションは9種類
注湯の後半で温度を下げることでコーヒーの雑味を抑制する「Dual Temp」モード
Startボタンを押すと、上のシリンダーに入れた水が加熱され、下のシリンダーへと落ちていきます。下に落ち切ったお湯は、コーヒー粉と激しく混じりあいます(攪拌)。そして、フィルターを通して漉されたコーヒーがパイプを通して上に吹き上げられます。このコーヒーの噴水はなかなか見もので、ラスベガスのホテルにある噴水のようなエンターテインメント性があります。
抽出は意外にスピーディーで、経過時間を時系列で記すとこんな感じ(風味Medium・濃さMedium、2杯分)。
0分00秒 スタート
2分50秒 お湯が落ちきる・攪拌開始
3分10秒 コーヒーの噴出が始まる
3分50秒 抽出完了
一般的なサイフォン式コーヒーでは、フラスコから直接カップに注ぎますが、Siphonystaでは、本体右側の抽出バーを操作してカップに注ぎます。
スタートすると注湯が開始し、やがて激しく攪拌される
攪拌が完了すると、上のシリンダーにコーヒーが噴き上がる
レバーを引くことでカップに注がれる
味は、浸漬法ならではのバランスのとれた味と言いましょうか、まろやかで誰にでも飲みやすい味だと思います。そしてメッシュフィルターなので、コーヒーの油分も感じられます。コーヒーカップの底には細かな粉が残っていますが、これもサイフォンならではです。といっても量は多くはありません。抽出されたコーヒーが下から上へ移動するので、粉が混ざりにくくなっているようです。
カップに残る細かい粉も浸漬法ならではの醍醐味
まるでスーパーカー? こだわりのある人に
さてこのSiphonysta、どんな人におすすめなのでしょうか。逆に、おすすめしない人は明確です。まず、毎日何度もコーヒーを飲むような人、大人数で飲む環境には向いていません。1回あたりに淹れられる量は最大2杯(240ml)と少なめで、その都度洗うパーツの数も多いからです。食洗機に対応しているとはいえ、ペーパードリップのように、カスをそのままゴミ箱へポイというわけにはいきませんし。
価格も価格(66,000円)ですので、最初の1台として選ぶ人はまずいないでしょうが、今まで何台もコーヒーメーカーを買ってきたような、もしくはハンドドリップなりフレンチプレス、サイフォンで淹れてきたようなコーヒーにこだわりのある人が対象です。ミル内蔵の全自動コーヒーメーカーではないので、それなりのミルを持っていることも前提です(もちろん市販の粉も使えますが)。
ただ、そんな諸条件を乗り越えて買った満足感は高いと思われます。緻密な温度制御によって安定したサイフォンコーヒーが味わえることはもちろん、独特の機構はコーヒーマニアたちをも驚かせるでしょう。その先進性、独自性、置いておくだけでも絵になるデザインはまさに「ドヤ家電」。Siphonystaは男性なら憧れたであろうスーパーカーのような「見て良し、淹れて(走って)良し、見せて良し」の価値を持つコーヒーメーカーです。
洗うべきパーツは5点ほど。シリンダーなどは食洗機の使用にも対応している
置いているだけでカッコイイ。スーパーカーにガレージが必要なように、Siphonystaにもそれが似合うインテリアが欲しいですな
小口 覺
ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>
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