AMDは11月5日、Zen 3アーキテクチャを採用するデスクトップ向けCPU「Ryzen 5000シリーズ」を発売する。
 この発売に先立って、8コアCPU「Ryzen 7 5800X」と、12コアCPU「Ryzen 9 5900X」をテストする機会が得られたので、今回はベンチマークテストで新世代Ryzenの実力をチェックしてみた。
Zen 3アーキテクチャ採用のRyzen 5000シリーズ
 AMD Ryzen 5000シリーズは、Zen 3アーキテクチャを採用したデスクトップ向けCPU。前世代の第3世代Ryzenで採用されたチップレットアーキテクチャを引き続き採用しており、Zen 3に基づいて7nmプロセスで製造されたCPUダイ「CCD(Core Chiplet Die)」と、メモリコントローラやPCI Expressなどを備えるI/Oダイ「IOD」に機能を分割している。
 Ryzen 5000シリーズのCCDは、1つのダイで8基のCPUコアと32MBのL3キャッシュを備えている。また、Zen 2以前は4コアで構成されていたCCX(Core Complex)が8コア構成に変更され、CCD内のCPUコアすべてでL3キャッシュを共有する仕様となった。
 今回テストするCPUの場合、Ryzen 7 5800Xが1基のCCDをフル活用して8コア16スレッドを実現する一方、Ryzen 9 5900Xは8コア中2コアを無効化したCCDを2基搭載することで12コア24スレッドを実現している。
 一方、I/O機能を担うIODについては、Zen 2ベースの第3世代Ryzenと同じものを採用している。製造プロセスは12nmで、PCI Express 4.0 x24、DDR4-3200対応メモリコントローラなどを備える。
 Ryzen 5000シリーズは、CPUソケットにSocket AM4を引き続き採用した。AMD 500シリーズチップセット搭載マザーボードや、一部のAMD 400シリーズチップセット搭載マザーボードに対応BIOSを導入することで利用できる。そのほかの仕様については以下のとおり。

【表1】Ryzen 5000シリーズのおもな仕様

モデルナンバー

Ryzen 9 5950X

Ryzen 9 5900X

Ryzen 7 5800X

Ryzen 5 5600X

CPUアーキテクチャ

Zen 3

Zen 3

Zen 3

Zen 3

製造プロセス

7nm CCD + 12nm IOD

7nm CCD + 12nm IOD

7nm CCD + 12nm IOD

7nm CCD + 12nm IOD

CCD (Core Chiplet Die)

2

2

1

1

コア数

16

12

8

6

スレッド数

32

24

16

12

L2キャッシュ

8MB

6MB

4MB

3MB

L3キャッシュ

64MB

64MB

32MB

32MB

ベースクロック

3.4GHz

3.7GHz

3.8GHz

3.7GHz

最大ブーストクロック

4.9GHz

4.8GHz

4.7GHz

4.6GHz

対応メモリ

DDR4-3200 (2ch)

DDR4-3200 (2ch)

DDR4-3200 (2ch)

DDR4-3200 (2ch)

PCI Express

PCIe 4.0 x24

PCIe 4.0 x24

PCIe 4.0 x24

PCIe 4.0 x24

TDP

105W

105W

105W

65W

対応ソケット

Socket AM4

Socket AM4

Socket AM4

Socket AM4

CPUクーラー

Wraith Stealth

価格

9万6,800円

6万4,980円

5万3,480円

3万5,800円
8コア16スレッドCPU「Ryzen 9 5900X」
Ryzen 9 5900XのCPU-Z実行画面
8コア16スレッドCPU「Ryzen 7 5800X」
Ryzen 7 5800XのCPU-Z実行画面
 レビュアー向けに提供された「Ryzen Master」のRyzen 5000シリーズ対応版を実行してみたところ、TDP 105WのRyzen 9 5900XとRyzen 7 5800Xの電力リミット(PPT)は142Wに設定されていた。これは従来のSocket AM4向けCPUの105Wモデルと同じ値であり、電流リミットのTDC(95A)やEDC(140A)も同様だ。一方、動作温度のリミット値に関しては90℃となっており、こちらは従来の95℃より5℃引き下げられている。
Ryzen 9 5900XのRyzen Master実行画面
Ryzen 7 5800XのRyzen Master実行画面
テスト機材
 今回、Ryzen 5000シリーズの比較対象には、前世代となるZen 2ベースの12コア24スレッドCPU「Ryzen 9 3900X」と、Ryzen 9 5900Xの競合製品となるIntelの10コア20スレッドCPU「Core i9-10900K」を用意した。
 Ryzen 5000シリーズを搭載するのは、同CPU対応BIOS「2311」を導入したASUSのAMD X570搭載マザーボード「ROG CROSSHAIR VIII HERO (WI-FI)」で、ビデオカードにはGeForce RTX 3080 Founders Editionを用意した。そのほかの機材については以下のとおり。

【表2】テスト機材一覧

CPU

Ryzen 7 5800X

Ryzen 9 5900X

Ryzen 9 3900X

Core i9-10900K

コア数/スレッド数

8/16

12/24

12/24

10/20

CPUパワーリミット

PPT:142W、TDC:95A、EDC:140A

PL1:125W、PL2:250W、Tau:56秒

マザーボード

ROG CROSSHAIR VIII HERO (WI-FI) [UEFI:2311]

ASUS TUF GAMING Z490-PLUS (WI-FI) [UEFI:1410]

メモリ

DDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-53、1.20V)

DDR4-2933 16GB×2 (2ch、21-21-21-47、1.20V)

ビデオカード

GeForce RTX 3080 Founders Edition

システム用SSD

CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)

CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)

アプリケーション用SSD

CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)

CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)

CPUクーラー

ASUS ROG RYUJIN 240 (ファンスピード=100%)

電源

CORSAIR RM850 CP-9020196-JP (850W/80PLUS Gold)

グラフィックスドライバ

GeForce Game Ready Driver 456.71 (27.21.14.5671)

OS

Windows 10 Pro 64bit (Ver 2004 / build 19041.572)

電源プラン

AMD Ryzen Balanced

バランス

室温

約27℃
Zen 2ベースの12コア24スレッドCPU「Ryzen 9 3900X」
Intelの10コア20スレッドCPU「Core i9-10900K」
ASUS ROG CROSSHAIR VIII HERO (WI-FI)
GeForce RTX 3080 Founders Edition
ベンチマーク結果
 それでは、ベンチマークテストの結果をみてみよう。
 実施したベンチマークテストは、「Cinebench R20」、「Cinebench R15」、「Blender Benchmark」、「V-Ray Benchmark」、「やねうら王」、「HandBrake」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、「PCMark 10」、「SiSoftware Sandra」、「3DMark」、「VRMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Forza Horizon 4」、「フォートナイト」、「レインボーシックス シージ」、「VALORANT」、「モンスターハンターワールド : アイスボーン」、「Microsoft Flight Simulator」。
Cinebench
 CPUの3DCGレンダリング性能を測定するCinebenchは、最新版のCinebench R20と、旧バージョンのCinebench R15を実行した。
 Cinebench R20のマルチスレッドテスト(All Core)では、Ryzen 9 5900Xが全体トップの8,281を記録しており、2番手のRyzen 9 3900Xに約14%、3番手のCore i9-10900Kに約31%の差をつけている。このテストにおいて、価格帯の異なるRyzen 7 5800Xは当然4番手の結果ではあるのだが、Core i9-10900Kと4%差にまで迫っている。
 Cinebench R20のシングルスレッドテスト(Single Core)では、637を記録したRyzen 9 5900Xがトップで、2%差の2番手にRyzen 7 5800Xが続いた。Ryzen 5000シリーズはRyzen 9 3900XやCore i9-10900Kに2割前後の差をつけており、Zen 3アーキテクチャのシングルスレッド性能の高さを示している。
 Cinebench R15の結果もCinebench R20とほぼ同様で、Ryzen 5000シリーズがシングルスレッドとマルチスレッドの両面で優れた結果を記録している。
【グラフ01】Cinebench R20
【グラフ02】Cinebench R15
Blender Benchmark
 続いて、3DCGソフト「Blender」のオフィシャルベンチマークソフト「Blender Benchmark」の結果だ。
 CPUのマルチスレッド性能が重要なこのテストでトップに立ったのはRyzen 9 5900Xで、2番手のRyzen 9 3900Xに7~19%、Core i9-10900Kに29~70%の差をつけている。
 一方、Ryzen 7 5800Xも興味深い結果を残しており、処理時間の短いbmw27以外では、10コア20スレッドCPUのCore i9-10900Kより短時間でレンダリングを完了している。これは、ブースト動作が切れてTDPの範囲内で動作するCore i9-10900Kよりも、Ryzen 7 5800Xの方が優れたマルチスレッド性能を発揮することを示唆するものだ。
【グラフ03】Blender Benchmark
V-Ray Benchmark
 レンダリングエンジンV-Rayのオフィシャルベンチマークソフト「V-Ray Benchmark」では、CPUを使用する「V-RAY」を実行した。
 マルチスレッド性能が問われるテストであるため、トップは24,272を記録したRyzen 9 5900Xが獲得。2番手は約20%差でRyzen 9 3900X、3番手はCore i9-10900Kをわずかに上回ったRyzen 7 5800Xだった。
【グラフ04】V-Ray Benchmark v4.10.07 「V-RAY (CPU)」
将棋ソフト「やねうら王」
 将棋ソフトの「やねうら王」では、KPPT型とNNUE型の評価関数でそれぞれベンチマークコマンドを実行した。ベンチマークコマンド中の「nT」は、各CPUのスレッド数を入力している。
 KPPT型では、Ryzen 9 5900Xがシングルスレッドとマルチスレッドの両方でトップを獲得しており、2番手にはどちらもRyzen 7 5800Xが続いている。シングルスレッドの結果をみると、Ryzen 5000シリーズの2モデルはRyzen 9 3900Xに1.6倍以上の差をつけており、その差がマルチスレッドテストにも反映された格好だ。
 一方、NNUE型ではシングルスレッドテストの結果はKPPT型と近いものとなったが、マルチスレッドテストでは各CPUのスコア差がCinebenchなどに近いものとなっており、Ryzen 7 5800Xは4番手に沈んでいる。
【グラフ05】やねうら王 v4.91
動画エンコードソフト「HandBrake」
 オープンソースの動画エンコードソフト「HandBrake」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)の動画ソースをYouTube向けプリセットでエンコードするのに掛かった時間を測定した。
 最速はRyzen 9 5900Xで、Ryzen 9 3900Xに8~15%、Core i9-10900Kに28~37%の速度差をつけた。Ryzen 7 5800Xは、フルHDからフルHDへの変換では4番手だが、4K動画からの変換ではCore i9-10900Kをわずかに上回る結果を記録している。
【グラフ06】HandBrake v1.3.3
動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」
 動画エンコードソフトのTMPGEnc Video Mastering Works 7では、フルHD(1080p)と4K(2160p)のソース動画をH.264形式とH.265形式に変換するのに掛かった時間を測定した。
 こちらでも、Ryzen 9 5900Xが条件を問わず最速の結果を記録している。2番手については条件次第で、CPUコアの使用率が低いフルHD動画への変換ではRyzen 7 5800XがRyzen 9 3900を上回る結果が見られる一方、4K→4K変換ではRyzen 9 3900Xが2番手を確保している。なお、Ryzen 7 5800Xはすべての条件でCore i9-10900Kを上回っている。
【グラフ07】TMPGEnc Video Mastering Works 7 v7.0.17.19「H.264形式へのエンコード」
【グラフ08】TMPGEnc Video Mastering Works 7 v7.0.17.19「H.265形式へのエンコード」
PCMark 10
 PCMark 10では、もっともテスト項目が多い「PCMark 10 Extended」のスコアを比較した。
 シングルスレッド性能が問われるテストの多いPCMark 10は、これまでIntel製CPUが強さを発揮していたベンチマークテストだが、今回はRyzen 5000シリーズの2モデルがCore i9-10900Kを上回っている。
【グラフ09】PCMark 10 Extended (v2.1.2506)
SiSoftware Sandra 20/20「CPUベンチマーク」
 SiSoftware Sandra 20/20のCPUテストから、「Arithmetic」、「Multi-Media」、「Image Processing」の実行結果を紹介する。
 CPUの演算性能を測定するArithmeticでは、整数演算テストDhystoneのIntegerでCore i9-10900KがRyzen 9 5900Xを上回っている。ただし、浮動小数点演算テストWhetstoneでは逆に、Ryzen 9 5900Xに26~29%の差をつけられている。
 マルチメディア性能を測定するMulti-Mediaでは、すべての条件でRyzen 9 5900Xがトップスコアを記録。Ryzen 7 5800XもMulti-Media Quad-float以外のテストでCore i9-10900Kを上回っている。
 画像処理性能を測定するImage Processingでは、オイルペイントやディフュージョン、マーブリングといった処理でCore i9-10900Kがトップスコアを記録する一方、Ryzen 9 5900XはRyzen 9 3900Xに27~44%の差をつけている。ライバルとの比較では得手不得手があるものの、前世代の製品からは大きなパフォーマンスアップを果たしているようだ。
【グラフ10】SiSoftware Sandra v30.80 「Processor Arithmetic (プロセッサの性能)」
【グラフ11】SiSoftware Sandra v30.80 「Processor Multi-Media (マルチメディア処理)」
【グラフ12】SiSoftware Sandra v30.80 「Processor Image Processing (画像処理)」
SiSoftware Sandra 20/20「メモリベンチマーク」
 メモリ帯域幅を測定するMemory Bandwidthでは、Ryzen 9 5900Xが38.73GB/s、Ryzen 7 5800Xが36.00GB/sを記録した。Ryzen 9 5900Xの方がやや高速なのは、テスト時にメモリにアクセスするCPUコアとCCDの数が多いためだろう。
 「Cache & Memory Latency」で測定したメモリレイテンシでは、Ryzen 5000シリーズが約70nsを記録している。これはRyzen 9 3900Xの46.6nsや、Core i9-10900Kの31.5nsより大幅に大きなものだ。メモリコントローラを備えるIODはRyzen 9 3900Xと同じものなので、このレイテンシの増加はCCDの内部構造やCCDとIOD間の接続などに理由があるのだろう。
【グラフ13】SiSoftware Sandra v30.80 「Memory Bandwidth (メモリ帯域幅)」
【グラフ14】SiSoftware Sandra v30.80 「Cache & Memory Latency (メモリレイテンシ)」
SiSoftware Sandra 20/20「キャッシュベンチマーク」
 CPUが備えるキャッシュの性能を測定できる「Cache & Memory Latency」と「Cache Bandwidth」の結果をグラフ化した。
 Cache & Memory Latencyでは、CCXが「4コア+16MBキャッシュ」で構成されるRyzen 9 3900Xが16MBを区切りにレイテンシが増加しているのに対し、CCXが「8コア+32MBキャッシュ」に変更されたRyzen 5000シリーズは32MBまで低レイテンシを維持していることが確認できる。
 Cache Bandwidthの結果をみると、Ryzen 9 5900Xのキャッシュ帯域幅は同じコア数のRyzen 9 3900Xよりやや低い数値となっている。
【グラフ15】SiSoftware Sandra v30.80 「Cache & Memory Latency (レイテンシ)」
【グラフ16】SiSoftware Sandra v30.80 「Cache & Memory Latency (クロック)」
【グラフ17】SiSoftware Sandra v30.80 「Cache Bandwidth」
3DMark
 3DMarkでは、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Wild Life」、「Port Royal」の4テストを実行した。
 GPU負荷の高いDirectX 12テスト「Time Spy」では、CPUテストでトップスコアを獲得したCore i9-10900Kがトップに立っており、Ryzen 9 5900Xは1%差の2番手、Ryzen 5 5800Xは4%差で4番手となっている。
 DirectX 11テストの「Fire Strike」では、Combined Scoreで優れた結果を残したRyzen 7 5800Xがトップスコアを獲得しており、Core i9-10900Kに約12%の差をつけている。2番手はRyzen 9 5900Xで、トップとの差は約2%。
 グラフィックスAPIにVulkanを用いる「Wild Life」では、Core i9-10900KがRyzen 5000シリーズに4~5%の差をつけてトップだった。Ryzen 5000シリーズ2モデルのRyzen 9 3900Xに対するアドバンテージは約3%。
 DXR(DirectX Raytracing)を用いたリアルタイムレイトレーシングテストの「Port Royal」は、Core i9-10900Kがトップスコアを記録してはいるものの、各CPUのスコアは横並びと言っても差し支えないものであり、CPUによる差はほとんどつかなかった。
【グラフ18】3DMark v2.14.7042「Time Spy」
【グラフ19】3DMark v2.14.7042「Fire Strike」
【グラフ20】3DMark v2.14.7042「Wild Life」
【グラフ21】3DMark v2.14.7042「Port Royal」
VRMark
 VRMarkでは、「Orange Room」、「Cyan Room」、「Blue Room」の3テストを実行した。
 CPUがボトルネックになっているOrange Roomでは、Ryzen 7 5800XがCore i9-10900Kに約13%、Ryzen 9 3900Xに約30%の差をつけてトップスコアを記録。8%差の2番手はRyzen 9 5900Xとなっており、Ryzen 5000シリーズが優れた性能を発揮している。
 Cyan Roomでは、Ryzen 5000シリーズ2モデルのスコアは横並びとなっており、約3%差でCore i9-10900Kにトップスコアを奪われてはいるものの、約13%の差でRyzen 9 3900Xを上回った。
 Ryzenが苦手としていた高フレームレートで、Intel製CPUと同等以上の性能を発揮しているのが興味深いところだ。なお、GPU負荷がひじょうに高いBlue RoomではCPUのボトルネックがほぼ生じないため、CPUの違いによるスコア差が生じていない。
【グラフ22】VRMark v1.3.2020「スコア」
【グラフ23】VRMark v1.3.2020「平均フレームレート」
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマーク
 ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマークでは、描画設定を「最高品質」に固定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。
 Ryzen 5000シリーズの2モデルは同じくらいのスコアを記録しており、それはCore i9-10900Kをすべての条件で上回っている。とくに、フルHDからWQHDではCore i9-10900Kに17~19%、Ryzen 9 3900Xに約36%という大差をつけており、GeForce RTX 3080からより多くの性能を引き出すことができている。
【グラフ24】ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマーク
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、描画設定を「高品質」に固定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。
 GPU負荷の高いテストであるため、WQHD以上ではGPUのボトルネックにより差がついていないが、フルHD解像度ではRyzen 5000シリーズがCore i9-10900Kに約6%、Ryzen 9 3900Xには約10%の差をつけている。
【グラフ25】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.2
Forza Horizon 4
 Forza Horizon 4では、描画設定を「ウルトラ」に固定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でベンチマークモードを実行したほか、高fps設定として描画設定「ミディアム」かつフルHD解像度でのテストも行なった。
 ここでもRyzen 5000シリーズが優勢で、4Kでは並んでいるものの、WQHDで約8%、フルHDで約9%、高fps設定では16~18%の差をCore i9-10900Kにつけている。
【グラフ26】Forza Horizon 4 (v1.443.701.2)
フォートナイト
 フォートナイトでは、描画設定「最高」でフルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定したほか、高fps設定として描画設定「中」かつフルHDでもテストしている。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、3D解像度は常に100%。
 描画設定を最高にしたさい、Ryzen 5000シリーズのフレームレートはCore i9-10900Kとほぼ同じ程度となっているのだが、高fps設定ではトップのRyzen 9 5900Xが約27%、2番手のRyzen 7 5800Xが約18%の差をつけてCore i9-10900Kを上回った。
【グラフ27】フォートナイト (v14.40)
レインボーシックス シージ
 レインボーシックス シージではベンチマークモードを使い、描画設定「ウルトラ」でフルHDから4Kまでの画面解像度と、高fps設定として描画設定「中」かつフルHDでテストを行なった。グラフィックスAPIは「Vulkan」で、レンダリングのスケールはつねに100%。
 ここではCore i9-10900Kが比較製品中最高のフレームレートを記録しており、WQHD解像度より低GPU負荷な設定では5~6%の差をつけてRyzen 5000シリーズを上回っている。
【グラフ28】レインボーシックス シージ (Y5S3.3)
VALORANT
 VALORANTでは、描画設定を可能な限り高く設定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定した。
 4K解像度ではGPUのボトルネックでフレームレートが頭打ちになっているが、WQHDで19~21%、フルHDでは46~49%もの大差をつけて、Ryzen 5000シリーズがCore i9-10900Kを上回っている。
 これは、ゲーミングディスプレイの表示能力を大きく超える高フレームレートでついた差ではあるのだが、この数値はあくまで平均フレームレートだ。DirectX 11タイトルであるVALORANTは、CPUのボトルネックでフレームレートが大きく低下する場面が存在しており、今回の測定でも、フルHD時の最小フレームレートはCore i9-10900Kが232fps、Ryzen 9 5900Xは382fpsだった。意味のない差であるとは言えないだろう。
【グラフ29】VALORANT (v01.10.00.0483114)
モンスターハンターワールド : アイスボーン
 モンスターハンターワールド : アイスボーンでは、描画設定「最高」をベースにHigh Resolution Texture Packを適用し、フルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定した。
 Ryzen 5000シリーズとCore i9-10900Kの差は、どの解像度でもそれほど大きなものではないが、若干の差でCore i9-10900Kがもっとも高いフレームレートを記録している。
【グラフ30】モンスターハンターワールド : アイスボーン (v15.02.00)
Microsoft Flight Simulator
 Microsoft Flight Simulatorでは、画面解像度をフルHDに固定して、4種類の描画設定でテストした。テストでは、羽田空港から関西国際空港へのルートをAIに飛行させ、離陸後3分間のフレームレートを測定している。使用した機体は「Daher TBM 930」。
 最高フレームレートを記録したのはRyzen 7 5800Xで、1~7%差の2番手はRyzen 9 5900X。3番手のCore i9-10900KとRyzen 7 5800Xの間には19~32%という大差がついており、Ryzen 9 3900Xとの差は25~44%にも達している。
 グラフィックスAPIにDirectX 11を用いるMicrosoft Flight Simulatorでは、描画するオブジェクトが多いシーンではCPU負荷が高くなる一方で、ゲームが利用できるCPUコア数が少ないためシングルスレッド性能の高さが問われる傾向にある。結果、シングルスレッド性能に優れたRyzen 5000シリーズが優れた性能を発揮したのだろう。
【グラフ31】Microsoft Flight Simulator (v1.9.5.0)
消費電力とCPU温度
 システム全体の消費電力をワットチェッカーで測定した結果が以下のグラフだ。測定したのはベンチマーク中のピーク消費電力とアイドル時消費電力で、CPUベンチマークと3Dベンチマークの結果を分割してグラフ化している。
 アイドル時の消費電力については、Ryzen系は61~63Wでほぼ横並びとなっている一方、Core i9-10900Kは約43Wで20W近く低い数値となっている。ここにはマザーボードの違いなどによる差も含まれているが、アイドル時消費電力がIntel製品に比べて高くなるのは、従来のデスクトップ向けRyzenと同様の傾向だ。
 CPUベンチマーク実行中のピーク消費電力については、Cinebench R20のSingle Coreテストを除き、Ryzen 5000シリーズが比較製品の中でもっとも低い電力を記録している。逆にもっとも高い消費電力を記録したのはCore i9-10900Kで、これはブースト動作の仕様により、56秒間250Wの電力消費を許容されているためだ。
 3Dベンチマーク実行時の消費電力は、511~547Wを記録したRyzen 9 5900XがFINAL FANTASY XVを除く5つのテストで最大値となっている。これは、CPU自体の消費電力が大きいというだけでなく、より多くの性能を引き出されたことでGPUの消費電力が増加したことが少なからず影響している。
【グラフ32】システムの消費電力 (CPUベンチマーク)
【グラフ33】システムの消費電力 (3Dベンチマーク)
 次に、Ryzen 5000シリーズに高負荷をかけたさいのCPU温度をテストしてみた。
 テストでは、TMPGEnc Video Mastering Works 7で、2160p→2160p変換(x264)を約10分間連続で実行。モニタリングソフトの「HWiNFO v6.32」を使って、ファンコントロールや温度リミットに用いられるCPU温度「Tctl」を測定し、テスト中の最大値と最低値、CPU使用率40%以上で動作中の平均CPU温度をグラフにまとめた。
 ピークCPU温度は、Ryzen 9 5900Xが68.0℃で、Ryzen 7 5800Xが84.5℃。CPU使用率40%以上での平均CPU温度はRyzen 9 5900Xが63.5℃で、Ryzen 7 5800Xは83.7℃だった。両CPUの温度リミットが90℃であることを考えると、Ryzen 7 5800Xのブースト動作を最大限発揮させるためには、かなり高性能なCPUクーラーが必要となるだろう。
【グラフ34】CPUの温度「HWiNFO v6.32 (Tctl)」
 両CPUのモニタリングデータをグラフ化した結果が以下のグラフだ。
 Ryzen 7 5800Xは、135W前後の電力を消費しながら4.5GHz強のCPUクロックで動作している。CPU温度は先のグラフで見た通り80℃を超えているが、テスト開始から2分が経過する頃には温度の上昇は停止している。
 Ryzen 9 5900Xは、終始電力リミットいっぱいの142Wの電力を消費しながら4.15GHz前後のCPUクロックで動作している。CPU温度は60℃ほどから65℃程度までじわじわ上昇しており、それに連動してCPUクロックもじわじわ低下している。第3世代Ryzen同様、Ryzen 5000シリーズのブースト動作がCPU温度と密接にリンクしていることが伺える。
 ちなみに、Ryzen 9 5900XよりRyzen 7 5800Xの方がCPU温度が高いのはチップレットの構成によるものだ。2基のCCDとIODで142Wを消費するRyzen 9 5900Xと、1基のCCDとIODで135Wを消費するRyzen 7 5800Xなら、CCD1基あたりの消費電力(=発熱)が大きいのはRyzen 7 5800Xの方であり、消費電力(=発熱)が大きいからCCDの温度も高くなるというわけである。
【グラフ35】Ryzen 7 5800X のモニタリングデータ
【グラフ36】Ryzen 9 5900X のモニタリングデータ
あの第3世代Ryzenを過去のものにするRyzen 5000シリーズ
 今回実施したテストでRyzen 5000シリーズが示した性能はじつに素晴らしいものだった。Ryzen 9 5900Xは、前世代の12コアCPUであるRyzen 9 3900Xをシングルスレッドとマルチスレッドの両方で大きく上回り、Intelの得意分野であったゲームにおいてCore i9-10900Kを圧倒する結果も少なくなかった。
 前世代である第3世代Ryzenも素晴らしい性能を備えたCPUだったが、こうしてRyzen 5000シリーズと比較すると「旧世代」の製品なのだと認識させられる。クリエイターであれ、ゲーマーであれ、PCによりよい性能を求めるのであれば、Ryzen 5000シリーズはぜひとも検討すべきCPUであると言えよう。 生配信実施のお知らせ
 11月6日(金)18時より、Ryzen 5000シリーズ発売記念の生配信を実施します!

 Ryzen 5000シリーズが動く姿をみなさんにいち早くお見せするだけでなく、マザーボードメーカー5社(ASRock、ASUSTeK、BIOSTAR、GIGABYTE、MSI)のスタッフによるプレゼンバトル、スペシャルゲストの鈴木咲さんによる生組み立て、そして、Ryzen 5000シリーズ発売カウントダウンと、盛りだくさんの内容でお届けします! AMD公式配信AMD HEROES WORLDとのコラボ企画なので、AMD佐藤美明さんも登場!

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投稿者 chintablog

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