ROG Flow X13
 このたび、Zen 3世代のAPU「Ryzen 9 5980HS」と「GeForce GTX 1650 Max-Q」を搭載するASUSのモバイルゲーミングノート「ROG Flow X13」をテストする機会が得られた。今回はこのノートパソコンを使って、AMDの新世代モバイル向けAPU「Ryzen 5000シリーズ」の実力をチェックしてみよう。
Zen 3採用の新世代APU「Ryzen 5000シリーズ」
 AMDのモバイル向けAPU「Ryzen 5000シリーズ」は、第3世代Ryzen APU(Renoir)の後継にあたる新世代APU。記事執筆時点では製品仕様のすべては明らかにされていないが、CPUアーキテクチャがZen 2からZen 3にアップデートされたことや、TSMCの7nmプロセスで製造されていることが発表されている。
 今回テストする「ROG Flow X13」に搭載された「Ryzen 9 5980HS」は、8コア16スレッドCPUと、8基のコンピュートユニットを備えるGPUコア「Ryzen Graphics」を統合したAPUで、TDPは35W。CPUとGPUのほかには、DDR4-3200とLPDDR4-4266に対応するメモリコントローラや、PCI Express 3.0を備えている。

【表1】Ryzen 9 5980HSのおもな仕様

モデルナンバー

Ryzen 9 5980HS

Ryzen 7 PRO 4750G

CPUアーキテクチャ

Zen 3

Zen 2

製造プロセス

7nm

7nm

コア数

8

8

スレッド数

16

16

L2キャッシュ

4MB

4MB

L3キャッシュ

16MB

8MB

ベースクロック

3.0GHz

3.6GHz

最大ブーストクロック

4.8GHz

4.4GHz

GPU

Radeon Graphics

Radeon Graphics

コンピュートユニット

8

8

GPUクロック

2,100MHz

2,100MHz

対応メモリ

DDR4-3200/LPDDR4-4266

DDR4-3200

PCI Express

PCIe 3.0

PCIe 3.0 x24

TDP

35W

65W

対応ソケット

Socket FP6

Socket AM4
ASUS ROG Flow X13
 ASUS ROG Flow X13は、アスペクト比16:10の13.4型液晶ディスプレイを搭載するモバイルゲーミングノート。前述の通りAPUであるRyzen 9 5980HSと、ディスクリートGPUとしてGeForce GTX 1650 Max-Qを搭載している。
 本体サイズは298.7×223.2×15.95mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.35kg。薄型軽量な本体に360度回転ヒンジを採用したROG Flow X13は、2in1スタイルで使える携帯性に優れたゲーミングノートだ。
ASUS ROG Flow X13
360度回転ヒンジを採用しており、2in1 PCスタイルで利用できる
 製品版のROG Flow X13では液晶やストレージの仕様が異なる複数のモデルが用意されるが、今回借用したモデルはWQUXGA(3,840×2,400ドット)の高解像度液晶、32GBのLPDDR4X-4266メモリ、1TBのNVMe SSDを搭載していた。

【表2】ASUS ROG Flow X13のおもな仕様

CPU

Ryzen 9 5980HS

iGPU

Radeon Graphics (APU内蔵)

dGPU

GeForce GTX 1650 Max-Q 4GB

メモリ

LPDDR4X-4266 32GB

ストレージ

1TB NVMe SSD

ディスプレイ

13.4型WQUXGA液晶(3,840×2,400ドット)

OS

Windows 10 Pro

本体サイズ

298.7×223.2×15.95mm

重量

約1.35kg
 なお、ROG Flow X13には専用の外付けGPUドック「ROG XG Mobile」が用意されており、GeForce RTX 3080を内蔵するROG XG Mobileと接続することでGPU性能を飛躍的に高めることができるのだが、こちらについては後日テストすることにしたい。
専用の外付けGPUドック「ROG XG Mobile」。GeForce RTX 3080を内蔵している
ROG Flow X13と接続したROG XG Mobile
テスト機材
 今回のテストではROG Flow X13のほかに、1世代前のRyzen APU「Renoir」ベースのデスクトップ向けAPU「Ryzen 7 PRO 4750G」を搭載したAMD B550環境を用意した。CPUコアやGPUのコンピュートユニット数は同等ながら、ノートPCに搭載されたモバイル向けのRyzen 9 5980HSと、最大88W(PPT)の電力消費が許容されるRyzen 7 PRO 4750Gの比較はフェアな条件ではないが、新旧APUコアの違いを知る手がかりにしてほしい。
 また、ROG Flow X13はGPUテストにおいて、内蔵GPUのRadeon Graphicsを利用した場合と、外付けGPUのGeForce GTX 1650 Max-Qのスコアを可能なかぎり取得している。そのほかのテスト機材と条件については以下のとおり。

【表3】テスト機材一覧

CPU

Ryzen 9 5980HS

Ryzen 7 PRO 4750G

コア数/スレッド数

8/16

8/16

CPUパワーリミット

PPT:42W、TDC:51A、EDC:105A

PPT:88W、TDC:65A、EDC:95A

マザーボード

ASUS TUF GAMING B550M-PLUS (WI-FI) [UEFI:1801]

メモリ

LPDDR4X-4266 32GB

DDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-53、1.20V)

APU内蔵GPU (iGPU)

Radeon Graphics

Radeon Graphics

外付けGPU (dGPU)

GeForce GTX 1650 Max-Q

システム用SSD

1TB NVMe SSD

CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)

アプリケーション用SSD

SanDisk Ultra 3D SSD (USB 3.2 Gen 1)

CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)

CPUクーラー

サイズ 白虎 弐 (ファンスピード=100%)

電源

ACアダプタ (100W)

CORSAIR RM850 CP-9020196-JP (850W/80PLUS Gold)

iGPUドライバ

20.40.22.05 (27.20.14022.5002)

21.1.1 Optional (27.20.14527.2002)

dGPUドライバ

GeForce Game Ready Driver 457.09 (27.21.14.5709)

OS

Windows 10 Pro 64bit (Ver 2004 / build 19041.746)

Windows 10 Pro 64bit (Ver 20H2 / build 19042.746)

電源プラン

バランス

バランス

室温

約24℃
ベンチマーク結果
 それでは、ベンチマークテストの結果をみていこう。
 実施したベンチマークテストは、「CINEBENCH R23」、「CINEBENCH R20」、「V-Ray Benchmark」、「やねうら王」、「HandBrake」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、「PCMark 10」、「SiSoftware Sandra」、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「フォートナイト」、「レインボーシックス シージ」、「VALORANT」。
CINEBENCH
 CPUの3DCGレンダリング性能を測定するCINEBENCHは、最新版のCINEBENCH R23と、旧バージョンのCINEBENCH R20を実行した。
 CINEBENCH R23のマルチスレッドテスト(Multi Core)では、Ryzen 9 5980HSが10,977を記録しており、これは11,920を記録したRyzen 7 PRO 4750Gの約92%に達している。両APUの電力リミット(PPT)の差を考えれば、Ryzen 9 5980HSの電力効率が優れていることを示す結果であると言える。
 一方、シングルスレッドテスト(Single Core)では、1,506を記録したRyzen 9 5980HSがRyzen 7 PRO 4750Gに約16%の差をつけて上回った。最大動作クロックの差を上回るスコア差は、クロックあたりの命令実行数(IPC)が増加したZen 3アーキテクチャの採用によるものだろう。
 Ryzen 9 5980HSは旧バージョンであるCINEBENCH R20において、マルチスレッドテストでRyzen 7 PRO 4750Gの約95%のスコアを記録し、シングルスレッドテストでは逆に16%の差をつけて上回った。
【グラフ01】CINEBENCH R23
【グラフ02】CINEBENCH R20
V-Ray Benchmark
 レンダリングエンジンV-Rayのオフィシャルベンチマークソフト「V-Ray Benchmark」では、CPUを使用する「V-RAY」を実行した。
 このテストもマルチスレッド性能が問われるものなのだが、Ryzen 9 5980HSが電力リミットの差を覆してRyzen 7 PRO 4750Gを約2%上回った。
【グラフ03】V-Ray Benchmark v4.10.07 「V-RAY (CPU)」
将棋ソフト「やねうら王」
 将棋ソフトの「やねうら王」では、KPPT型とNNUE型の評価関数でベンチマークコマンドを実行した。また、今回は通常のAVX2用に加え、Zen 2最適化版でのテストも実施した。なお、ベンチマークコマンド中の「nT」は、各CPUのスレッド数を入力している。
 KPPT型ではRyzen 9 5980HSがRyzen 7 PRO 4750Gに明確な差をつけて上回っており、AVX2用ではシングルスレッドで約63%、マルチスレッドで約51%の大差をつけた。Zen 2用ではシングルスレッドで約36%差、マルチスレッドで約28%差にまで縮んでいるが、Ryzen 9 5980HSが大きくリードしていることには変わりない。
 NNUE型ではRyzen 7 PRO 4750Gがマルチスレッドでの差を縮めているものの、AVX2用ではシングルスレッドで28~55%、マルチスレッドで3~12%の差をつけてRyzen 9 5980HSがリードしている。
【グラフ04】やねうら王 v6.00 「KPPT型」
【グラフ05】やねうら王 v6.00「NNUE型」
動画エンコードソフト「HandBrake」
 オープンソースの動画エンコードソフト「HandBrake」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)の動画ソースをYouTube向けプリセットでエンコードするのにかかった時間を測定した。
 ここでは、すべての条件でRyzen 7 PRO 4750Gが最速を記録しており、Ryzen 9 5980HSに約13~22%の速度差をつけている。
【グラフ06】HandBrake v1.3.3
動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」
 動画エンコードソフトのTMPGEnc Video Mastering Works 7では、フルHD(1080p)と4K(2160p)のソース動画をH.264形式とH.265形式に変換するのにかかった時間を測定した。
 x264を用いたH.264形式への変換では、すべての条件でRyzen 7 PRO 4750Gが最速を記録しており、Ryzen 9 5980HSは14~22%の速度差をつけられている。
 一方、x265を用いるH.265形式への変換では、フルHD→フルHDの変換でRyzen 9 5980HSがRyzen 7 PRO 4750Gより2%高速にエンコードを完了しており、ほかの条件ではRyzen 7 PRO 4750Gに逆転されているものの、速度差は3~5%とH.264形式への変換より小さな差となっている。
【グラフ07】TMPGEnc Video Mastering Works 7 (v7.0.18.20)「H.264形式へのエンコード」
【グラフ08】TMPGEnc Video Mastering Works 7 (v7.0.18.20)「H.265形式へのエンコード」
PCMark 10
 PCMark 10では、もっとも詳細なテストである「PCMark 10 Extended」のスコアを比較した。なお、Ryzen 9 5980HSでは内蔵GPUを用いた際のスコアを正常に取得できなかったため、外付けGPUであるGeForce GTX 1650 Max-Q利用時のスコアとなっている。
 総合スコアにはGPU性能の差が反映されてしまっているが、アプリの起動速度などを測定する「Essentials」やオフィスアプリを用いる「Productivity」といったGPUの影響が少ないテストでも、シングルスレッド性能に優れるRyzen 9 5980HSがRyzen 7 PRO 4750Gを上回っており、日常的な操作に対するレスポンスが向上していることが伺える。
【グラフ09】PCMark 10 Extended (v2.1.2506)
SiSoftware Sandra 20/20「CPUベンチマーク」
 SiSoftware Sandra 20/20のCPUテストから、「Arithmetic」、「Multi-Media」、「Image Processing」の実行結果を紹介する。
 CPUの演算性能を測定するArithmeticでは、Ryzen 7 PRO 4750Gがすべてのテストで最高スコアを記録しており、Ryzen 9 5980HSは整数演算テストDhystoneで13~15%、浮動小数点演算テストWhetstoneで1~5%の差をつけられている。
 マルチメディア性能を測定するMulti-Mediaでは、Arithmeticとは一転してRyzen 9 5980HSがすべてのテストで最高スコアを記録している。新しい拡張命令を積極的に利用するMulti-MediaでRyzen 9 5980HSが優れたパフォーマンスを示したという結果は、同様に拡張命令を活用するやねうら王やx265でのエンコードでRyzen 9 5980HSが見せた強さと符合する。
 画像処理性能を測定するImage Processingでは、Ryzen 9 5980HSがRyzen 7 PRO 4750Gとほぼ同等と言えるほどのスコアを記録した。
【グラフ10】SiSoftware Sandra v30.85 「Processor Arithmetic (プロセッサの性能)」
【グラフ11】SiSoftware Sandra v30.85 「Processor Multi-Media (マルチメディア処理)」
【グラフ12】SiSoftware Sandra v30.85 「Processor Image Processing (画像処理)」
SiSoftware Sandra 20/20「メモリベンチマーク」
 メモリ帯域幅を測定するMemory Bandwidthでは、LPDDR4X-4266を用いるRyzen 9 5980HSが28.58GB/s、DDR4-3200を用いるRyzen 7 PRO 4750Gが35.73GB/sを記録した。Ryzen 7 PRO 4750Gの方が約25%高速という結果ではあるが、使用しているメモリ自体が異なるため、APUのメモリアクセスの差だけが反映されたものではない点に注意してほしい。
 「Cache & Memory Latency」で測定したメモリレイテンシでは、Ryzen 9 5980HSが99.7nsを記録しており、Ryzen 7 PRO 4750Gの51.1nsの2倍近い数値となっている。こちらもメモリ自体が異なるためAPUの特性のみを反映した結果とは言えないが、以前にデスクトップ向けRyzen 5000シリーズを検証したさい、Zen 3がZen 2よりレイテンシが大きくなっていることは確認しているので、CPUアーキテクチャの違いがメモリレイテンシの差に影響している可能性はある。
【グラフ13】SiSoftware Sandra v30.85 「Memory Bandwidth (メモリ帯域幅)」
【グラフ14】SiSoftware Sandra v30.85 「Cache & Memory Latency (メモリレイテンシ)」
SiSoftware Sandra 20/20「キャッシュベンチマーク」
 CPUが備えるキャッシュのパフォーマンスを測定できる「Cache & Memory Latency」と「Cache Bandwidth」の結果をグラフ化した。
 Cache & Memory Latencyでは、8MBのL3キャッシュを備えるRyzen 7 PRO 4750Gが8MBからレイテンシが増加しているのに対し、16MBのL3キャッシュを備えるRyzen 9 5980HSは16MBまで低いレイテンシを保っている。これは、2基のCCX(Core Complex)にCPUコアとL3が分割されているRyzen 7 PRO 4750Gに対し、すべてのCPUコアとL3キャッシュを1基のCCXに統合したRyzen 9 5980HSという、CPU内部構造の違いによるものだ。
 Cache Bandwidthの結果では、キャッシュの帯域幅自体はRyzen 9 5980HSよりRyzen 7 PRO 4750Gの方が大きいことがわかる。ただし、L3キャッシュの容量が増加しているため、16MBや64MBの帯域幅はRyzen 9 5980HSが逆転している。
【グラフ15】SiSoftware Sandra v30.85 「Cache & Memory Latency (レイテンシ)」
【グラフ16】SiSoftware Sandra v30.85 「Cache & Memory Latency (クロック)」
【グラフ17】SiSoftware Sandra v30.85 「Cache Bandwidth」
3DMark
 3DMarkでは、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Wild Life」を実行した。なお、Wild LifeではGeForce GTX 1650 Max-Qでテストを実行できなかったため、同GPUのデータは未取得となっている。
 もっとも高速なのはdGPUのGeForce GTX 1650 Max-Qだが、APU内蔵GPU同士を比較してみると、Time Spyで約13%、Fire Strikeは約7%、Wild Lifeは約24%、それぞれRyzen 7 PRO 4750GがRyzen 9 5980HSを上回っている。
 もっとも軽量なテストであるWild Lifeで最大の差がついたのは電力リミットの差だろう。GPU負荷が軽いテストほどCPUの処理と消費電力が増加するため、電力リミットがパフォーマンスの枷になるというわけだ。
【グラフ18】3DMark v2.16.7117「Time Spy」
【グラフ19】3DMark v2.16.7117「Fire Strike」
【グラフ20】3DMark v2.16.7117「Wild Life」
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマーク
 ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマークでは、画面解像度をフルHDに固定して、3種類の描画品質でテストを実行した。
 APU内蔵GPUの比較では、5~7%の差でRyzen 7 PRO 4750GがRyzen 5980HSを上回っている。外付けGPUのGeForce GTX 1650 Max-Qは、Ryzen 9 5980HS内蔵GPUの2.4~2.5倍のスコアを記録しており、エントリークラスとは言えAPU内蔵GPUとは一線を画す性能を備えていることがわかる。
【グラフ21】ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマーク
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、画面解像度をフルHDに固定して、3種類の描画品質でテストを実行した。
 Ryzen 9 5980HSは、Ryzen 7 PRO 4750Gに3~9%の差をつけられている。なお、APU内蔵GPUのスコアは、いずれも快適な動作には程遠いものとなっており、このクラスのゲームをフルHD解像度でプレイするのは最新のモバイルAPUでも厳しいようだ。
【グラフ22】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.3
フォートナイト
 フォートナイトでは、画面解像度をフルHDに固定して、4種類の描画品質でテストを実行した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、3D解像度は100%。
 APU同士の比較で勝利したのはRyzen 7 PRO 4750Gで、Ryzen 9 5980HSは11~26%の差をつけられている。ここでは描画品質を「低」まで落とせば60fpsを超えるフレームレートを記録できており、描画品質にこだわらなければAPUでもフルHD解像度でプレイすることが可能だ。
【グラフ23】フォートナイト (v15.21)
レインボーシックス シージ
 レインボーシックス シージでは、画面解像度をフルHDに固定して、3種類の描画品質でベンチマークモードを実行した。グラフィックスAPIは「DirectX 11」で、レンダリングのスケールは100%。
 Ryzen 9 5980HSは、13~18%の差をRyzen 7 PRO 4750Gにつけられている。Ryzen 9 5980HSでも描画品質を「低」にすれば、かろうじて平均60fpsを超えているが、安定して60fpsの維持を期待するならレンダリングのスケールをを引き下げるなどの調整が必要だ。
【グラフ24】レインボーシックス シージ (Y5S4.2)
VALORANT
 VALORANTでは、画面解像度をフルHDに固定して、3種類の描画品質でフレームレートを測定した。
 ここでもRyzen 7 PRO 4750GがRyzen 9 5980HSを上回っており、その差は8~9%だった。フレームレート自体はどの描画品質でも60fpsを上回っており、モバイルAPUであるRyzen 9 5980HS単体でもプレイするのに十分なパフォーマンスは得られている。
【グラフ25】VALORANT (v02.01.00.511946)
「モバイルCPU」として魅力的なRyzen 5000シリーズAPU
 新世代APUであるRyzen 9 5980HSは、CPUのシングルスレッド性能で前世代を圧倒し、マルチスレッド性能でもTDP 65W仕様のRyzen 7 PRO 4750Gに迫るパフォーマンスを発揮してみせた。Zen 3アーキテクチャの採用によって獲得したCPU性能は、モバイル向けCPUとして非常に優れたものであると言える。
 一方、内蔵GPUの性能に関しては、CPU性能ほどの改善は見られなかった。軽いゲームであれば遊ぶことができる程度の性能は備えているが、外付けエントリーGPUであるGeForce GTX 1650 Max-Qとの差は歴然で、内蔵GPUのゲーミング性能に過度な期待はすべきでない。
 内蔵GPU性能自体は高くないものの、優れたCPU性能を備えるRyzen 5000シリーズAPUは、モバイルCPUとして非常に魅力的な性能を備えた製品だ。今回テストしたROG Flow X13のように外付けGPUを搭載したノートPCであれば、内蔵GPUの非力さはカバーできるので、ノートPCに強力なCPU性能を求めるクリエイターやゲーマーにとって、Ryzen 5000シリーズAPU搭載ノートPCは有力な選択肢となるだろう。

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投稿者 chintablog

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