AMD リサ・スーCEOはCPU+GPUが1チップになったInstinct MI300の開発意向表明を行ない、実チップを公開した
 AMDは1月5日(米国時間)に開幕するCESの前日基調講演に、同社CEOのリサ・スー氏が登壇し、今年投入予定の各種CPU/GPUに関する発表を行なった。
 スー氏は同社が買収したXilinx(ザイリンクス)由来のFPGAやデータセンター向けソリューションを説明。この中でCPUとGPUをワンチップ(つまりはAPU)にした「Instinct MI300」の開発意向表明を行ない、実際に開発中のチップを公開した。
 Instinct MI300は、従来の製品に比べてAI演算時の性能が8倍に、電力効率は5倍になり、AI演算やHPC処理に大きな効果を発揮するという。
Ryzen 7000シリーズのノート版とデスクトップ版の追加SKUなどを発表
Ryzen 7040(開発コードネーム : Phoniex)をこう開始するリサ・スー氏
 AMDがCES基調講演にて対面で登壇するのは、2019年にスー氏自身が行なって以来となる。CES前日の夕方の基調講演は、一番格式高いとされており、かつてはMicrosoftのビル・ゲイツ元会長の指定席となっていた。
 スー氏が前半で講演した内容については、以下の別記事で紹介しているので、ご参照いただきたい。
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 中でも、Ryzen 9 7950X3Dなど、Ryzen 7000シリーズの3D V-Cache版は大きな注目を集めており、今回の世代から16コア/32スレッド版が追加されたことで、さらに性能が向上。性能重視の自作PCユーザーにとって注目の製品だ。
 また、ノートPC向けにはデスクトップPCと同じようにチップレットになり、TDPが55~75W+とOEMが自由に設定できるRyzen 7045シリーズ(開発コードネーム : Dragon Range)のほか、AMDのノートPC向けSoCとしては初めてRDNA 3のGPUと、AI推論アクセラレータを追加したRyzen 7040シリーズ(開発コードネーム : Phoenix)などが追加されている。
Ryzen AIの説明には、パートナーとなるMicrosoft EVP 兼 CPO のパノス・パネイ氏も登壇した。MicrosoftがWindows 11 2022 Updateで提供しているWindows Studio EffectsでRyzen AIがNPUとして活用できる
 このほかにもノートPC向けディスクリートGPUでRDNA 3を採用した製品、TDP 65Wの枠に再定義したRyzen 7000シリーズの下位SKUなどが発表されており、ノートPCやデスクトップPCのハイエンドからメインストリームまで、満遍なく製品が発表された基調講演となった。
Xilinx由来のFPGAソリューションの拡充を加速
Vitisの新しいドメイン開発キットとしてVitis Medical Image Librariesを医療向けに投入
 スー氏による講演の後半は、同社が買収し今はAMDの一部門となっているXilinxのソリューションを採用した製品やデータセンター向けの製品に関してだった。
 XilinxはAECG(Adaptive and Embedded Computing Group)というAMDの事業部になっており、徐々にAMD側の製品にも旧Xilinxの製品が採用されるようになっている。
 今回のCESで発表したノートPC向けのRyzen 7040シリーズ(開発コードネーム : Phoenix)には、Xilinx由来のFPGAが採用されており、そのFPGAをAI推論のアクセラレータ「Ryzen AI」として活用している。
MagicLeapとVitisの組み合わせでリモート手術を実現
 基調講演でスー氏は「AMDはアダプティブ・コンピューティング・ソリューションを提供するベンダーとしてトップシェアになっている。今後もこうした製品を拡張していき、世界が抱えているさまざまなソリューションを解決していきたい」と述べた。
 Xilinx由来であるFPGA製品(Versal)で、簡単にソフトウェア開発ができる開発環境のVitis(バイティス)があるが、これの特定領域の開発キットとして「Vitis Medical Image Libraries」をリリースすることを発表。その実例としてMagicLeap社のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を利用してリモート手術を行なうソリューションなどを紹介した。
キャディ・コールマン氏(左)、NASAのアルテミス計画、オリオン計画にAMDのFPGA(Virtex)が利用される
 また、アメリカの著名な宇宙飛行士であるキャディ・コールマン氏を壇上に呼び、FPGAを利用することで柔軟に宇宙向けソリューション開発できることなどを説明した。
CPUとGPUが1チップになった「Instinct MI300」
Instinct MI300
 講演の最後にスー氏は「今日はもう1つチップを紹介する」と述べ、HPC(High Performance Computing)向けに提供しているInstinctシリーズの最新製品として「Instinct MI300」を紹介した。
 Instinctシリーズは、AMDのCDNA(HPC向けのGPUアーキテクチャ)に基づくHPC向けのGPUで、すでにMI250Xなどの製品が市場に投入されている。
 それに対してMI300ではCDNAのGPUだけでなく、EPYC由来のCPUに関しても搭載され、チップレットの仕組みで1つのパッケージに統合されている(パッケージ上には複数のダイが実装されており、CPUとGPU、HBM2メモリなどに見える、詳細は不明)。
性能
 スー氏は「このMI300は現行製品となるMI250Xと比較してAIの処理能力は8倍になり、AI処理の電力効率は5倍になる。これによりこれまで数カ月かかっていたような処理も数週間に短縮され、消費電力も大きく下がる」と述べた。CPUとGPUが1パッケージ上で統合されたことで、AI演算時の性能が大きく引き上げられることになる。
 スー氏はMI300は今年の後半に市場に投入する計画であることを明らかにした。
今年の後半に市場に投入される予定

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投稿者 chintablog

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