毎年恒例、年末最後の記事は2019年を振り返り、今年(2019年)扱った中で印象に残った機器、PC Watch全体からのピックアップ、そして筆者の近況などをお届けしたい。
今年扱ったもの
今年本連載で扱った機器は計46で以下のとおり。ディスプレイやプリンタなど、一般的な周辺機は1台もなく、そして蓋を開けてみるとデスクトップPCがたったの1台と言うのにも驚いている(スティックPCは用途が限定的なので外した)。以前からこの傾向はあったものの、これだけノートPCとスマートフォンだらけになったのは今年が初ではないだろうか。
・デスクトップPC×1
・ノートPC×25
・分離型2in1/タブレット×4
・スマートフォン×12
・その他×4(Android PDA、スティックPC、ボードコンピュータ×2)
以下、印象に残ったものをいくつかピックアップした。
Jetson Nano開発者キット
1番印象に残っているのは、前編と後編と2回に別けて掲載した「Jetson Nano開発者キット」、CUDAコア128基を搭載したワンボードコンピュータだ。この手のハードウェアは昔から好きなのだが、AI初体験と言うこともあり、とにかく執筆以前の段階で苦労した(楽しみながらなので苦と言う意味の苦労ではない)。
記事にもあるように、演算中の数値の羅列だけではピンと来ないが、実際に画像を与えて、それが何かなど、結果がわかる状態だと、なるほどAIが動いていると実感する。身近なのは(AIではない機種もあるが)スマートフォンのカメラ/シーン認識だろうか。今後開発側でない限り、知らないうちにAIを使っていることが多くなるだろう。この記事に限らずとにかくAIと言うキーワードが目立つ1年だった。
OPPO Reno A
スマートフォンは12機種扱ったなかではダントツに「OPPO Reno A」だ。SoCはミドルレンジながら、6GB/64GB、OLED、おサイフケータイ、背面1,600万画素/F1.7+200万画素(深度用)、ディスプレイ内指紋認証、防水・防塵……など、これに超広角があれば完璧か!? と思う内容で税別価格35,800円。とんでもないコストパフォーマンスだ。次点は、5万円台ながらハイエンドのSoCを搭載したファーウェイの「nova 5T」だろうか(microSDとおサイフケータイ非対応が惜しい)。
さて、お気づきだろが、昨今元気のいいスマートフォンメーカーは、ファーウェイ、OPPO、そして先日日本に上陸したXiaomi(Xiaomi、5眼カメラ搭載スマホ「Mi Note 10」で日本市場進出)。全部中国製だ。どれも群を抜くハイコストパフォーマンスで完成度も高い。国産機にも頑張って欲しいところだが、ここまで差がついてしまうと……。ソニーがカメラに使うセンサーの売り上げを伸ばしているように、何か搭載するコンポーネント/パーツで勝負となるのか!?
エルザ VELUGA 5000
ノートPCは、後半「VAIO S15 ALL BLACK EDITION」、「エルザ VELUGA 5000」、「ASUS ROG Strix G」と、ハイエンド系が続いたのが興味深かった。なかでも店頭予想価格698,390円前後で高額に加え、連載史上最高パフォーマンスを叩きだしたエルザ VELUGA 5000が印象に残っている。単純にノートPCとしての仕上がりも良かった。
そろそろノートPCも、IntelやAMDのリファレンスフォームファクタに、ディスプレイ、キーボードなどを付けそれなりの筐体へ収めた感じのものが多くなっており、面白みが薄れつつある。そう言った意味では、ゲーミングやワークステーション系のノートPCは、いろいろ尖がっていて楽しめる要素がまだ残っているように思う。
少し話がそれるが、高価なパソコンと言えば、出荷がはじまる「Mac Pro(2019)」だろう。最小構成でも599,800(税別)円から。最大構成にすると軽く500万円超えと、長い間PCとしては見たこともない価格となる。このときの構成は28コアXeon、128GB×12/1.5TBのメモリ、SSD 2TB×2。SSDはまだ現実味があるものの、メモリとプロセッサはちょっと何に使うか想像できない範囲だ。これは極端な例であるが、やれることが限られるローエンドより、何でもありのゲーミングを含むハイエンドは、来年もさまざま出ることが予想され面白そうだ。
気になった業界動向
以降はニュースなどのバックナンバーを眺めながら「お!」っと思ったものをピックアップ。個人的な趣味嗜好でかなり偏ってるのはお許しを。
1月はCES 2019でいろいろな発表があり、IntelのIce Lake、AMDの第3世代Ryzen、NVIDIAのGeForce RTXなどのデモが行なわれた。製品レベルとしては約半年遅れになるが、下半期に出てくる製品の概要をこのタイミングで知ることができる貴重なイベントだ。CES 2020は来年1月7日からの開催。何が飛び出すか!?
2月末から3月頭にかけてはモバイル系のMWC 2019。Arm版Windows用のSnapdragon 8cxの話題が載っているが、来年2020年1月に国内でも販売予定のMicrosoft「Surface Pro X」は、このSnapdragon 8cxのMicrosoftカスタム版(高速版)Microsoft SQ1を搭載している。Surface(2)ではWindows RTを採用し、結局うまく行かなかったが、個人的にSurface/Surface 2を持っていたこともあり、3度目の正直となるか期待している製品でもある。
もう1つ興味深いのは、Samsungの折りたたみ型スマートフォン「Galaxy Fold」の発表が、2月21日のGalaxy UNPACKED 2019で行なわれたこと。以降、折りたたみ部分の強度が問題で出荷が遅れたものの、現在は日本ではauから購入可能になっている。ファーウェイも同種の「Mate X」を11月から販売開始しているが、中国のみで日本では扱われていない。
この閉じてスマートフォン、広げてタブレットになるフォルダブル型のスマートフォン、特殊パネルが必要なので現在高価なのは仕方ないとして、たとえば10万円になったら、5万円になったら……市場の何割を占めるのか興味あるところ。
ただ、フォルダブルはAndroid 10で正式対応なのでシステム的には問題ないが、今でもスマートフォンUIのみのアプリ(つまりタブレットUI未対応)が多く、どれだけのアプリが対応するかがキーとなりそうだ。この時、単純に対応するアプリの数ではなく、利用者が多いアプリの対応度が重要だ。数だけ揃えても普段使うアプリが未対応では意味がない。
3月はファーウェイの「P30 Pro」が発表された。個人的に興味があるのはこのモデルと言うより、新規に開発したRYYBセンサーだ。一般的なRGGBセンサーに比べて40%多く光を取り込め、高感度に強いとされる。問題は従来方式の色補完ロジックが使えず、RYYBに構築し直すこと。当然発色にも影響が出る。その後、数多くのP30 Proで撮影された絵を見たが、どうもこのチューンがまだうまくいってないような気がする。来年も同時期に「P40 Pro」の発表があるようだが(Google Mobile Servicesも搭載しているとのこと)、カメラ周りが気になる部分だ。
4月、5月、5月末から6月頭@COMPUTEX 2019はとくになし。6月はこれまでiPhoneとiPad両方をカバーしていたiOSがiPadOSとして分離する発表があった。すでに出荷済なので、その違いはおわかりだろう。周辺機などを接続せず、単独運用だと旧来と大きな違いはない。初めからあまり差をつけるのも、いろいろな意味で難しいため、今後、じょじょに差が広がるのではないだろうか。
少し面白いのは設定/アクセシビリティ/タッチ/AssistiveTouchでMouseが使えるようになったこと。キーボードと組合すと2in1のように作動する。今後この辺りもさらに強化されそうな雰囲気だ。
7月は、「AMD CPUが量販店市場でシェア68.6%」(実際はCPU単体のシェアにおいてAMDが68.6%であり、搭載PCの数値ではないの訂正入り)の記事が目に留まった。IntelとAMDはライバル関係であるが、Intel製プロセッサの供給不足が顕在化してきた2018年9月以降じわじわとシェアを詰めた感じだ。実際いくつかレビューしており、また製品発表でもAMD搭載機がかなり増えている。ベンチマークテストすれば各々違いがあるものの、完成品としてのWindows搭載PCはどちらも普通に使うことができる。基本的に1強では進歩が遅くなるため、この2社の競争は業界的に喜ばしいことだと思う。
8月は、「Intel、10nmの第10世代Coreを出荷開始。プロセッサー・ナンバー変更」。たとえばこれまで、Core i5-4300Uと書いていたのが、Ice LakeからCore i5-1035G7となる。iの後ろは同じ、世代の部分が1桁から2桁へ、その分SKUデザインは3桁から2桁へ。そして、U/Y/H/Xなどシリーズ名だった部分がG7/G4/G1でiGPUのグレード(64EU/48EU/32EU)となる。長年親しんできたプロセッサー・ナンバールールだっただけに、慣れるのに少し時間がかかりそうだ。
参考までに、同じ第10世代でも、Comet Lakeは14nmのままなので、プロセッサー・ナンバーはCore i5-10210Uといったような感じで、iGPUのグレードは含まれない。何ともややこしい話だ。
9月は例年通り新型iPhoneの発表。今年は「iPhone 11」/「iPhone 11 Pro(Max)」/「iPad」となった。SoCも変わったが1番の違いは超広角対応となる。もともと広角か広角+望遠だったので超広角を加え2つまたは3つのレンズに。それによってポートレートモード(背景ぼかし)が、前者は顔認識で人間に限る、後者は望遠に切り替わるという作動だったが、どちらも広角で可能になった。超広角も広角によるポートレートモードも撮る楽しみが増えるので素直に喜びたい。
10月はSurfaceの新型、「Surface Pro 7」、「Surface Pro X」、「Surface Duo」、「Surface Neo」が発表、「Surface Laptop 3」にAMD Ryzenモデルが追加された。
Surface Pro 7は従来モデルからのモデルチェンジ、Surface Pro Xは1月で触れているので省略。おもしろいのはSurface Duo、Surface Neoだ。
Surface DuoはなんとAndroid搭載の2画面端末。つまりフォルダブル型となる。ただし、Galaxy Foldのように継ぎ目がないタイプでなく、5.6型で完全に2画面分かれている。現在の技術では、ここが落としどころと言う意味なのかも知れない。しかし同社からAndroid搭載機が出るとは思わなかった。
Surface Neoは、2つの9型ディスプレイを搭載し、折りたたみ可能な2in1だ。それぞれの画面で別アプリを動かしたり、2画面で1つのアプリを動かすことも可能。更にハードウェアキーボードを下側のパネル上に設置すると、手前の場合は空いた奥側がサブディスプレイ、奥の場合は空いた手前側がタッチパッドになる……と、これまでにないスタイルだ。OSは専用のWindows 10X。
どちらも発売は、2020年の年末なのでまだ1年あるが、今から楽しみな1台となりそうだ。
11月はRyzen 9 3950X、Athlon 3000Gの国内販売開始、技適対応の「Raspberry Pi 4 Model B 4GB版」が発売、Motorola、縦2つ折りのAndroidスマホ「Razr 2019」、Core i5-10210Y搭載8.4型UMPC「OneMix 3 Pro」が国内発売などが面白そうなところか。昔は好きだったUMPCは、さすがに今は目がつらいので、個人的な興味の対象から外れてしまったが……。
12月は、Xiaomi、5眼カメラ搭載スマホ「Mi Note 10」で日本市場進出、MSI、世界初のミニLEDディスプレイ搭載ノート。
Mi Note 10は、1億800万画素のメインカメラを含む5つの背面カメラを搭載したスマートフォンで遂に日本上陸だ。ただ最近スマートフォンのカメラもコンデジ末期と同様、画素数をどんどん上げてきている。カタログスペックの星取表としては分かりやすいが、だからといって高画質とは限らない。またスマートフォンで撮った写真の用途を考えると明らかにオーバースペック。(無理だろうが)できればセンサーサイズ(と、それに見合った画素数)での勝負に変えて欲しいところ。
MSI「Creator 17」が搭載している“ミニLEDディスプレイ”は聴き慣れないキーワードだ。基本的に液晶パネルのバックライトの1つであるが、一般的なLEDよりチップ面積が小さく、さらにローカルディミングと組み合わせ「黒い部分は消灯」することが可能になるらしい。つまり一般的な液晶パネルよりコントラストアップと省電力化が期待でき、OLEDの対抗馬とされている。ただこの“ミニLEDディスプレイ”という言葉がわかりにくい。原文も“Mini LED display”なので仕方ないのだが、もっとわかりやすい表現はないのだろうか。
細かいところでは改めて1月から12月まで見直していると、PD関連の記事や製品が一気に増えている。Type-CはPD 1本でまとまり一件落着と言ったところ。筆者手持ちの機器も随分Type-C/PD対応が増えてきた。
さて、今年もっと注目すべきは「米政府によるHuaweiに対する禁輸措置」となるだろうか。筆者のコラムで政治的な話はあまり触れたくなかったのでこれまで書かなかったが、この件、基本的に次世代5Gの覇権争いで、対象は基地局を作る技術を持つ同社に限られる。同じ中国製でも、端末しか作れないメーカーは(政治的に変なことをしないかぎり)対象にならない。従って同社製でもスマートフォンやPCは無関係なのだが、巻き込まれたかたちとなっている。
ご存知のように4Gでも同社の基地局が世界中で使われている。それは技術とコストがほかより勝っているからだ。仮にスマートフォンに限らず多くの機器に組み込まれるであろう、5Gでもそうなってしまうと、(たとえばの話でそんな機能があるとは確認されていない)意図的にすべてオフにされると、それこそ国家存亡の危機となる。少し通信が止まっても大騒ぎになるのはご存知のとおり。よっていろいろ理由をつけて禁輸措置しているのだ。
一時期バックドアだの傍受用の極小チップなどと噂さされたが、あった! 発見! とは出るものの、どのタイミングでどのポートでプロトコルは暗号化は、具体的にどのチップでどんな機能とか、一切出ない。つまりないのだ。最近じょじょに措置が緩くなってきてるのも、あまりない理由で引っ張れないため。とは言え、国防上の問題も絡むため、完全に解除されるのは難しそうだ。
趣味
最後に筆者が今年追加もしくは入れ替えた機材など。まずスマートフォンであるが、結局今年は機種変していない。NTTドコモ版「iPhone X」の24回払いも終わっているので、下取りに出して+αで「iPhone 11 Pro」を……と思っていたものの、まだ手元にある。従って「P20 Pro」がメイン、「iPhone X」がサブと言う状況は変わらず。スマートフォンをまったく買わなかったのは、初代のiPhoneが出てからはじめてかも知れない。
機種変しない理由はいくつかあるが、1つは現状でとくに不満がないこと。SoC的には2世代もしくは3世代前のものだが、FacebookやTwitter、Instagramなどソーシャル系メインであれば速度的にとくに困らない。もう1つはP20 Proのカメラの描写力が高く、これを越えるものがないと言う話もある。1/1.7型のセンサーとLeicaのコンビネーションは伊達じゃない。超望遠/超広角はあれば嬉しいが、おそらくあったとしても使用頻度は低いだろう。そろそろスマートフォンもコモン化してきており、毎年10万円前後使うなら、PC系と交互にした方が良さそうと個人的には思っている。
スマートフォンは現状維持/「P20 Pro」と「iPhone X」
パソコンに関しては、メイン1のデスクトップPCは、Core i7-7700/Radeon RX560/16GB/SSDのまま変わらず。時代はすでに第10世代になりつつあるが、仕事内容を考えると十分なパワー。しばらくこのまま行くつもりだ。
その代わりノートPCやタブレットなど、モバイル系は結構入れ替えた。まず「MacBook 12(Early 2015)」から「MacBook 12(2017)」へ。「MacBook 12から同じでディスコンのMacBook 12へとはなぜ!?」と言う声が聴こえそうだが、MacBook Air、MacBook Proと比較して気に入っているのは、1kgを切り軽いところ。メインマシンを1台で済ますならMacBook Proという選択肢もあるだろうが、上記したとおりメインマシンは別にあり、おもに持ち歩き用なら軽い方が良い。また新型MacBook Airはどっちつかずで半端だ。
次にEarly 2015から2017へ変更した理由は、プロセッサがCore M-5Y31からCore i5-7Y54へと少し速くなったこと(Core i7-7Y75、m3-7Y32モデルもある)、キーボードが若干改善されていること、そしてmacOS CatalinaのSidecar対応だ。
プロセッサの違いは体感でわかるほどの差がある。キーボードは、Early 2015をはじめて触った時、あのストロークのほぼない打鍵感が好きではなく、それが少しでも改善されていればというところ。加えてモバイル環境でiPad(Pro)と組み合わせデュアルディスプレイになるのはなかなか興味深く、試したかったから。さらにつまらない理由としてiPad Proに合わせてGoldからSpace Grayにしたかった(笑)。これらすべてが予想どおりで快適に作動中だ。
MacBook 12(2017)/Core i5-7Y54/8GB/512GB
現在メイン2はMac mini(Mid 2011)/Core i5-2520M/16GB/SSDからMacBook Pro 13(Mid 2012)/Core i7-3520M/16GB/SSD/WXGAをクラムシェルモード、つまり蓋を閉じてデスクトップPC的に使っているが、各種ベンチマークテストを動かしたところ、MacBook 12(2017)の方が速いので、場合によっては入れ替えるかも知れない。OSはMojaveとCatalinaのデュアルブートで普段は前者を使っている。